豊橋市自然史博物館の収蔵資料
豊橋市自然史博物館では、46億年の地球史を物語る貴重な資料、約60万点をしています。先カンブリア時代から現在に至るまで、生命の進化と環境の変遷を紐解くコレクションをご紹介します。
化石資料 概略
収蔵庫2:化石資料は時代ごとに保管管理されている
化石資料は、世界各地から収集した標本を収蔵している。 先カンブリア時代から新生代までの化石資料は、学芸員の採集のほか、寄贈、購入によって収集されたものである。 博物館に受けいれられた資料は、登録後に収蔵庫1・2に保管される。 登録標本には、新種記載のもとになったタイプ標本が含まれている。
先カンブリア時代
グリパニア:種類:藻類 / 産地:アメリカ・ミシガン州
地質時代の大半を占める先カンブリア時代の化石資料は、生物の初期進化を探る上で重要である。最初の真核生物や最初の動物群であるエディアカラ動物群の化石が代表的なものである。ストロマトライトも化石資料に含めてある。
古生代
ユ-ステノプテロン:種類:魚類 / 産地:カナダ・ケベック州
カンブリア紀からペルム紀までの各時代の化石を収蔵している。 植物、海綿類、貝類、ウミユリ類、腕足類、魚類、両生類などの化石がある。 石炭紀のメゾンクリ-ク生物群の化石やボリビアの化石は、まとまったコレクションである。
中生代
タラソメドン:種類:首長類 / 産地:アメリカ・コロラド州
三畳紀から白亜紀の各時代の化石を収蔵している。植物、ウニ類、アンモナイト、イカ類、甲殻類、翼類、魚竜、首長竜、恐竜類、哺乳類などの化石がある。 まとまったコレクションにはレバノンの魚類化石とブラジルの昆虫化石がある。
新生代
パラントロプス/ホモ・エレクタス:時代:鮮新世(左)産地:タンザニア/時代:更新世(右)産地:フランス
始新世から更新世の各時代の化石を収蔵している。 植物、有孔虫類、海綿類、貝類、昆虫類、甲殻類、ウニ類、両生類、哺乳類などの化石がある。 霊長類の進化を示す頭骨のレプリカコレクションや愛知県の貝類化石は充実している。
岩石・鉱物資料 概略
収蔵庫2の岩石・鉱物標本棚
東三河地域を中心とした岩石・鉱物資料と西南日本の中央構造線沿いに露出する岩石資料のほかいん石資料などを収蔵している。主要なものは、豊川にほぼ沿って走る中央構造線の北西側の花崗岩(かこうがん)とそれに伴う領家変成岩類、南東側の大きな力を受けてできた三波川変成岩類や砂岩・チャートなどの堆積岩である。また、設楽層群の堆積岩や火山岩、渥美層群の鬼板、高師小僧などがある。
岩石
松脂岩(しょうしがん)
種類:火成岩 / 産地:愛知県新城市四谷(仏坂トンネルの西)
東三河にみられる領家帯(花崗岩類、火山岩類、高温低圧の変成岩類)・三波川帯(塩基性岩類、低温高圧の変成岩類)・秩父帯(砂岩、泥岩、チャート、石灰岩などの堆積岩類)の岩石、渥美層群の地層のはぎ取り、西南日本の中央構造線露頭で採集した岩石資料などを収蔵している。
鉱物
アルチニー石
種類:炭酸塩鉱物 / 産地:愛知県新城市吉川
新城市中宇利で発見された中宇利石をはじめ吉川石、アルチニー石などの鈴木重人氏寄贈標本および重さ30kgのギベオンいん鉄、アレンデいん石などの鉄質、石質いん石の各種を収蔵している。
貝類資料 概略
貝類は大部分が殻の乾燥標本で、恒温・恒湿に保たれた収蔵庫5に保管されている。 高桑 弘氏寄贈貝類コレクション(約50,000点)、山崎芳江氏寄贈貝類コレクション(約30,000点)、中山 清氏寄贈貝類コレクション(約30,000点)、原田一夫氏寄贈貝類コレクション(約40,000点)、学芸員が主に東三河地方から採集した標本とその他の寄贈標本などがある。スチールの標本棚にコレクション毎に分類順に収蔵されている。 高桑 弘氏寄贈貝類コレクションの一部については、資料集を発行している。

収蔵庫5の標本棚
スチール製の標本棚に、コレクションごとに分類順に整理されています。

ニシキヒザラガイ
採集地:紀伊

イシマキシロマイマイ
採集地:愛知県豊橋市

ミサカエショウジョウカズラガイ
採集地:フィリピン

ツノガイ
採集地:和歌山県御坊市名田町

アオイガイ
採集地:奄美
昆虫資料 概略
東海地方産の標本を中心として約14万5千点を収蔵している。特色のあるコレクションには以下のものがある。
穂積俊文コレクション:愛知県を中心にした東海地方の甲虫類のコレクション。
阿江茂コレクション:アゲハチョウ類を中心としたチョウ類の種間、亜種間雑種のコレクション。
日本産チョウ類のコレクション:日本産のチョウのほぼ全種について、主要産地の標本を網羅したコレクション。ゴマシジミやギフチョウなど多くの絶滅産地の標本も収蔵している。
日本産トンボ類コレクション:日本産種のほぼ全種を網羅した184種2,364点を収蔵している。
世界のクワガタムシ標本:パラタイプ38点を含む約360種40,000点を収蔵している。
サイエンスミュージアムネット

チョウ類のコレクション
収蔵庫5に保管されている大規模なチョウ類標本群です。

ギフチョウ
産地:豊橋市二川(1951年採集)
豊橋では1980年頃までに絶滅したと考えられている貴重な記録です。

オオクワガタ
産地:名古屋市
日本最大のクワガタムシ。近年は野生個体が激減し、絶滅が危惧されています。

ムカシトンボ・ヒマラヤムカシトンボ
「生きている化石」として知られる古代トンボの生き残りです。

クロテイオウゼミ
産地:カリマンタン島
東南アジアに生息する世界最大のセミの仲間です。(比較:手前は豊橋のクマゼミ)

世界のクマバチ(森部コレクション)
船医として世界を巡った森部一雄博士により採集された、貴重な海外産標本群です。
その他無脊椎動物 概略
収蔵庫4(液浸標本)
昆虫・貝類・甲殻類以外の全ての無脊椎動物の分類群を含んでいます。海綿動物、刺胞動物、節足動物、棘皮動物などの乾燥標本および液浸標本で構成されており、資料は収蔵庫4および収蔵庫5に大切に保管されています。
海綿動物
三河湾・遠州灘から採集された海産カイメン類と、豊橋市周辺の溜め池や河川から採集したタンスイカイメン類の標本からなっています。それぞれ乾燥標本と液浸標本として収蔵されています。
節足動物
クモ形類や多足類など、昆虫類・甲殻類以外の節足動物のコレクションを収蔵しています。
棘皮動物
棘皮動物の液浸標本
遠州灘や三河湾の底引き網漁で混獲されたウニ、ヒトデ、ナマコ類など、約50点の標本を収蔵しています。地域の海洋生態系を知る上で貴重な資料です。
甲殻類資料 概略
タカアシガニ(産地:遠州灘)
日本近海の水深50〜300mに生息する世界最大の甲殻類です。
遠州灘や三河湾の底引き網漁で混獲されるエビやカニ、三河湾の干潟で採集されたカニ類を多数収蔵しています。標本の多くは、体色や形態を保持するために液浸標本として管理されています。
特に渥美半島沖の遠州灘産タカアシガニは有名ですが、近年は大型個体の捕獲が減少しており、収蔵標本は地域の自然環境の変化を知る上でも貴重な資料となっています。
哺乳類資料 概略
カモシカ(産地:岐阜県下呂町)
日本固有種・国の特別天然記念物
交通事故で死亡した野生動物や動物園飼育個体の死体を収集し、剥製および骨格標本として保存しています。愛知県奥三河に生息するカモシカなど、地域の生態系を示す資料を収蔵しています。
鳥類資料 概略
カワラヒワ・ヨタカ・オオコノハズク(産地:豊橋市)
東三河は渡り鳥の重要な経路ですが、事故で死亡する個体も少なくありません。当館ではこれらの死体を剥製や骨格標本として資料化し、学術研究や教育活動に役立てています。
ハ虫類資料 概略
アカウミガメ(ふ化幼体/産地:豊橋市)
東海地方の種を中心に、液浸標本や骨格標本を収蔵しています。特に豊橋の海岸を産卵地とするアカウミガメについては、事故死した個体や漂着遺体を地元の研究者と協力して保存しています。
両生類資料 概略
トウキョウサンショウウオ(産地:田原町)
約100点の液浸標本を収蔵しています。近年減少が著しい東海地方の両生類約20種について、東三河に生息する種を中心に現状調査を行い、標本の適切な管理に努めています。
魚類資料 概略
ネコギギ(産地:岐阜県美濃加茂市)
本州固有種・国の天然記念物
液浸標本約1,400点、剥製約200点を収蔵しています。愛知近海の魚類を網羅した「中島コレクション」など、地域の水生生物相を知る上で重要な資料群を所蔵しています。
植物・菌類資料 概略
収蔵庫5:植物標本収蔵スペース
植物部門では、恒川氏寄贈の郷土の植物(顕花・シダ植物)さく葉標本約18,000点をはじめとする寄贈標本や、学芸員が採集した標本を収蔵しています。これらの標本は分類体系に基づいて厳密に管理されています。
顕花植物
アカシデ(カバノキ科)
採集地:長野県上水内郡小川村 / 1995年8月7日採集
花を咲かせて種をつくる顕花植物は、主に「さく葉標本(押し葉標本)」として収蔵されています。その他、果実や水草の液浸標本、種子標本、樹木の木材標本など、多岐にわたる形態で約20,000点を所蔵しています。
シダ・コケ植物
ハリミズゴケ(ミズゴケ科)
採集地:愛知県豊橋市岩崎町 / 1995年11月15日採集
胞子で増えるシダ植物はさく葉標本として、コケ植物は乾燥標本として管理しています。コケ植物は採集データを記入した専用の包み紙に入れ、整理タンスにて分類別に保管されています。
菌類
マンネンタケ(サルノコシカケ科)
採集地:愛知県豊橋市石巻町 / 1996年7月21日採集
キノコなどの菌類は乾燥標本として収蔵されています。村田氏寄贈の三河地方の菌類標本約1,000点を中心に、採集データとともに分類別に整理・管理されています。
文献資料 概略
書庫の可動式書棚
国内外の自然史系博物館や大学など、約570の研究機関と研究報告や図録などの図書交換を行っています。購入や個人寄贈による単行本、地質図なども含め、蔵書総数は約28,000冊にのぼります。これらの資料は、可動式書棚を設置した専用の書庫で厳重に保管されています。
国外図書
アメリカ、イギリス、中国をはじめとする16か国、39機関の博物館や地質調査所と図書交換を行っています。世界各地の研究報告など、年間200冊以上の貴重な文献資料を受領し、収蔵しています。
国内図書
国内の博物館・大学など約430機関と図書交換を行い、年間約1,500冊の研究報告や図録を受領しています。そのほか、個人寄贈による学術雑誌や論文の別刷りなども多数所蔵しており、国内の研究動向を網羅しています。
地図・地質図類
豊橋市や愛知県の全図などの地図類をはじめ、地質調査所発行の地質図・解説書、土地利用図、日本地質図大系など、専門性の高い地図資料を豊富に所蔵しています。